大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡家庭裁判所久留米支部 昭和45年(少)756号 決定

少年 H・Y(昭三五・四・八生)

主文

この事件を福岡県久留米児童相談所長に送致する。

同所長は少年を教護院に入所せしめ、入所の日より三月間を限度としてその行動の自由を制限する強制的措置をとることができる。

理由

福岡県久留米児童相談所長の本件送致理由は別紙のとおりである。

本件調査、鑑別、審判の結果を総合すると、同所長の本件送致理由中の各事実(ただし少年の実父はその後教護院入所もやむなしと考えるに至つた。)が認められるので、この際少年を教護院に入所せしめ、基本的な生活指導を中心に教護を受けさせる必要がある。ただ少年は長期にわたる浮浪癖窃盗癖があり、周囲の強い規制がなければ自分の欲求を抑制できないので、三月間を限度として、強制的措置をとることができるとするのが相当である。

よつて少年法第一八条第二項により主文のとおり決定する。

(裁判官 徳本サダ子)

別紙

審判に付すべき事由

少年の父は事業に失敗し、実母は父親と口論して家出所在不明になり、当時柳河市に居住して居つたが昭和四三年の一〇月に久留米市に転居、寄宿先の娘B子と同棲が始まり、異弟のIが出生したので正式に前妻と協議離婚(現在市内のバーでホステスとして稼働中)現在の継母を正式に籍に入れている。家族は実父、継母、兄、異弟、本児の五人家族で現在生活扶助を受けている。少年は小学二年生時代より再三家出して、スーパーで補導されては当時柳河市のため大牟田児童相談所に身柄を移送して居り、昭和四四年に久留米に転居しても浮浪性癖、盗癖が再三あり、常に少年センターの補導員より通告を受けて居り、学校も一〇日間と続かず、学力も五歳程度しかない。実父も生活扶助を受けている関係上稼働する意志がなく、常にパチンコに出入りして本児の躾等無関心振りも甚だしく継母B子にまかしきりである。昭和四四年九月一〇日に窃盗、昭和四五年三月三〇日に窃盗にて久留米署より触法通告を受けて居り、その都度保護者を呼出して施設措置を指導したが、応じないのでやむなく在宅指導にしたが窃盗癖、浮浪性癖、怠学がますます進んで来るので○○○小学校の特殊学級に編入したが、さつぱり効果がなく再三家出して非行を重ねるので、この際本児の将来を考えて強制措置の審判を御願いし、福岡学園で教護指導をする必要性があると思料されるので、審判を御願いするに至つたものである。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例